男性ゲストの服装は、女性ほど選択肢がありません。だから簡単かというと、そうでもありません。選択肢が少ないぶん、外したときに目立ちます。
しかも、安全だと思われている選択肢のほうが実は危ない、という場面が2つあります。黒いスーツと、白いネクタイです。この記事はそこから始めます。
先に結論|迷ったらこの組み合わせ
友人や同僚として出席するなら、これで外しません。
- スーツ:ブラックスーツ(礼服)、または濃紺かチャコールグレーのダークスーツ
- シャツ:白の無地。レギュラーカラーかセミワイドカラー
- ネクタイ:シルバーグレーの無地
- 靴:黒の内羽根ストレートチップ
- 靴下:黒。座ったときに素肌が見えない丈
- ポケットチーフ:白
ここから先は、なぜこの組み合わせになるのかという話です。とくにスーツとネクタイは、よく言われていることと実際がずれています。
「黒いスーツがあるから大丈夫」は成り立たない
手持ちの黒いスーツで行こうと考える方は多いと思います。ここに落とし穴があります。
礼服のブラックスーツと、ビジネスの黒いスーツは、同じ黒ではありません。礼服はドスキンやタキシードクロスといった専用の生地を使い、濃く染めて光沢を抑えた漆黒に仕上げています。
対してビジネスの黒いスーツは、よく見るとグレーがかっていたり、紺っぽく見えたりします。単体で着ているぶんには気になりません。問題は並んだときです。
写真に残るところが厄介
結婚式は写真が残る場です。明るい場所で見比べたり、写真に撮ったりすると、黒の差ははっきり出ます。集合写真で自分だけ黒が薄い、ということが起こります。
ここで逆転が起きます。手持ちで済ませるなら、黒よりも濃紺やチャコールグレーのほうが安全です。黒は「本物の黒」と比べられてしまいますが、濃紺やチャコールグレーは比べられる相手がいません。最初から違う色として成立します。
黒を選ぶほうが難しい、というのが実際のところです。礼服を持っていないなら、無理に黒に寄せないでください。
なお礼服のブラックスーツは、色の濃さと光沢のなさで冠婚葬祭用だと分かるため、そのまま仕事には使いにくくなります。買うなら結婚式と葬儀の両方で使うつもりで選ぶことになります。

白ネクタイをどう考えるか|評価が割れている
「黒いスーツに白いネクタイ」は日本の結婚式の定番として知られています。ところがこの白ネクタイの扱いは、専門メディアのあいだで一致していません。調べたところ、大きく3つに割れていました。
なぜ割れるのかというと、この組み合わせが日本で独自に定着した慣習だからです。国際的な礼装の体系のなかに位置づけがないため、判断の基準が人によって変わります。
それでも白を選ぶなら
白がふさわしい場面はあります。次のどれかに当てはまるなら、白でも問題ありません。
- 親族として出席する:親族はゲストより格を上げるので、白やシルバーが選ばれます
- 年配の親族が多い式:白が正装だという感覚を持つ世代がいます
- 地域や家の慣習がある:白でないと浮く場が実際にあります
親族としての装いは結婚式の親族の服装に立場ごとの基準をまとめました。友人や同僚の立場で、どれにも当てはまらないなら、白を選ぶ理由はありません。

立場別|どこまで格を上げるか
服装の格は立場で決まります。ここで見落とされがちなのは、下げる方向だけでなく、上げすぎる方向にも失敗があることです。
- 主賓・上司として招かれた:ゲストのなかで最も格が高くなります。ブラックスーツにシルバーの無地。挨拶を頼まれているなら、なおさら整えてください
- 同僚・友人:ブラックスーツかダークスーツ。ネクタイはシルバーグレーが基本で、明るいパステルカラーも選べます
- 親族:ゲストより格上が原則です。結婚式の親族の服装を参照してください
格を下げすぎるとだらしなく見えますが、上げすぎると新郎新婦や親族より目立ちます。そして上げすぎのほうが、自分では気づきにくいのが難しいところです。友人の立場でシャンパンゴールドのネクタイに光る素材を合わせると、主賓より目立ってしまいます。
招待状に「平服でお越しください」と書かれていた場合は、また基準が変わります。結婚式の「平服でお越しください」は何を着る?にまとめました。
昼と夜で変えなくていい
礼装の体系では、昼と夜で最上位の装いが変わります。昼はモーニングコート、夜は燕尾服やタキシードです。ただしこれが関わるのは新郎新婦と、両家の父親や祖父といった近しい親族までで、友人や職場のゲストの装いは昼夜で変わりません。
気にするとすれば光り方です。夜の式では照明の下で光沢が強く出るので、ネクタイやポケットチーフの光沢を少し抑えると落ち着きます。それだけです。
アイテム別の決まり
シャツ
白の無地です。襟はレギュラーカラーかセミワイドカラー。ボタンダウンはカジュアルな襟型なので避けます。色柄シャツも同じ理由で外します。開きの大きいワイドカラーは、ビジネスの印象が強く出ます。
ネクタイ
シルバーグレーの無地が最も万能です。柄物なら、光沢のあるストライプや小さめのドットまで。避けるのは黒とダークカラーの無地で、弔事を思わせます。アニマル柄も「殺生」を連想させるため外します。
靴と靴下
靴は黒の内羽根ストレートチップが正解です。つま先に一本線が入った、最もフォーマルな形です。エナメルやスエード、ローファー、ブーツは外します。
靴下は黒。座ったときに素肌が見えない丈にしてください。短い靴下で足首が出るのは、当日いちばん多い失敗です。白い靴下と素足は論外です。
ポケットチーフ
白が基本で、ネクタイの色に合わせても構いません。素材はリネンかシルク。折り方は、まっすぐ一文字に見せるか、山を三つ作る形が定番です。入れるだけで印象が変わるので、持っていない方は最初に足す一枚にしてください。
ベルト・バッグ・小物
- ベルト:黒でシンプルなもの。靴の色とそろえます
- バッグ:手ぶらが基本です。荷物はクロークに預けます
- 時計:派手なスポーツウォッチは外します。挨拶の最中に時間を見るのも避けたいところです
当日の荷物は結婚式の持ち物リストで、預ける荷物の考え方は結婚式の荷物が多いときどうする?で確認できます。
サイズが合っていないと、生地の格より目立つ
礼服かダークスーツかで悩むより先に、確認してほしいことがあります。体に合っているかどうかは、生地の格よりはるかに目立ちます。とくに数年ぶりに袖を通す一着は、買ったときと体型が変わっています。
- シャツの袖:ジャケットの袖口から1cmから1.5cmほど出るのが目安です。まったく出ていないと、借りものに見えます
- ジャケットの着丈:お尻が隠れるくらい。短すぎるとカジュアルに寄ります
- 身幅:ボタンを留めて、胸に拳がひとつ入る余裕。背中に横じわが出るなら小さすぎます
- パンツの裾:フォーマルではハーフクッションが向くとされます。折れ目が深く出るワンクッションは、ややカジュアルに寄ります
直しが必要なら早めに出してください。裾上げや袖丈の直しは、その場で終わる店もあれば数日から1週間ほどかかる店もあります。招待状が届いた時点で一度着てみるのがいちばん確実です。

避けたいもの
- 全身黒:スーツもネクタイも靴も黒だと、喪服に見えます。ネクタイかポケットチーフで色を足してください
- アニマル柄・ファー:殺生を連想させるため、小物であっても外します
- リクルートスーツ:形と生地でそれと分かります。学生に見えるので、ネクタイと靴で立て直してください
- 手入れをしていない状態:しわ、汚れた靴、伸びた襟。格の話より、こちらのほうが目立ちます
女性が全身黒を避ける理由は結婚式に全身黒はアリ?にまとめました。考え方は男性も同じです。
買うかレンタルか|費用の目安
礼服を持っていない場合の選択肢は3つです。
- 買う:既製の礼服で3万円台から5万円台が中心です。オーダーでも4万円台からで、既製と大きくは変わりません
- 借りる:3日間で5,000円から15,000円ほどが目安です
- 手持ちのダークスーツで行く:費用はシャツとネクタイ、ポケットチーフだけで済みます
回数で考えると判断できます。レンタル1回を1万円とすると、3回から4回で安いほうの礼服の価格に並びます。何年かけて3回出席するかは人によりますが、その回数を超えそうなら買うほうが安くなります。礼服は結婚式だけでなく葬儀でも使うので、いずれ必要になる場面はきます。
レンタルで気をつけたいのが時期です。5月と10月は結婚式が集中するため、料金を上げる店があります。この時期の式に呼ばれたら、招待状が届いた時点で押さえておいてください。サイズ直しの相談もその場でできます。
季節でどこまで変えるか
男性の服装は季節で大きく変わりません。スーツを脱がないことが前提だからです。それでも調整できる点はあります。
- 春と秋:通年の生地でそのまま出席できます
- 夏:会場は冷房が効いています。上着を脱ぐ前提で選ばないでください。移動中の汗対策は替えのシャツで対応します
- 冬:コートは会場に入る前に脱ぎ、クロークに預けます。マフラーと手袋も同じです
季節ごとの考え方は春の結婚式の服装、秋の結婚式の服装、冬の結婚式の服装で詳しく書いています。コートとクロークのマナーは冬の記事にまとめました。
二次会と会費制ではどこまで崩せるか
崩せる幅は会の形式ではなく会場の格で決まります。ここを取り違える方が多い場所です。
- ホテルや専門式場での二次会:披露宴とほぼ同じ装いにします
- レストランやカフェ:ネクタイを明るい色にする、上着を替えるなどの調整ができます
会費制の結婚式でも同じです。会費制だから軽くしていい、ということはありません。案内状に書かれた会場名で判断してください。会費と服装の考え方は会費制の結婚式・1.5次会と結婚式の二次会の会費はいくら?で解説しました。
よくある質問
Q. 礼服を買うべきですか?
年に何度も出席するなら買う価値があります。そうでないなら、濃紺かチャコールグレーのダークスーツで十分です。礼服は結婚式と葬儀の両方で使うものなので、いずれ必要になる場面はきます。
Q. レンタルという選択肢はありますか?
あります。サイズが変わった、急に出席が決まった、というときに現実的です。試着の時間を見込んで早めに手配してください。当日に体に合っていないほうが、生地の格より目立ちます。
Q. ビジネススーツで行ってもいいですか?
濃紺やチャコールグレーの無地なら問題ありません。ストライプが目立つもの、明るいグレー、細身すぎる形は避けてください。シャツを白の無地に替え、ネクタイをシルバーグレーにして、ポケットチーフを足せば、それだけで印象が変わります。
Q. ネクタイをしないのはだめですか?
披露宴では締めてください。ノーネクタイが許されるのは、新郎新婦から明確にそう案内があった場合だけです。二次会でレストラン会場なら、外す判断もできます。
Q. 受付やスピーチを頼まれたら、装いを変えますか?
格を上げる必要はありません。ただし人前に立つぶん、手入れの状態が見られます。靴を磨き、しわを取っておいてください。受付を頼まれたときの流れは結婚式の受付をお願いされたら何をする?に書いています。
まとめ
- 迷ったら、ダークスーツ・白シャツ・シルバーグレーのネクタイ・黒の内羽根ストレートチップ
- 礼服の黒とビジネスの黒は別物。写真で差が出るので、礼服がないなら濃紺かチャコールグレーへ
- 白ネクタイは評価が割れている。一致しているのはシルバーグレーだけ
- 格は下げすぎだけでなく、上げすぎにも失敗がある。上げすぎのほうが気づきにくい
- 靴下の丈と靴の手入れは、格の話より目立つ
服装が決まったら、次は当日の持ち物です。結婚式の持ち物リストから進めてください。ご祝儀の金額は結婚式のご祝儀はいくら包む?にまとめています。