披露宴の中盤、いちばん写真が集まる瞬間がケーキ入刀です。
ただ、いざ選ぶとなると「相場がいくらなのか分からない」「イミテーションにすると安いと聞いたけれど、本当に得なのか」「どんなデザインを頼めばいいのか」と、判断材料が足りないまま打ち合わせの日が来てしまいがちです。
この記事では、ケーキの相場の考え方、生ケーキとイミテーションの費用がどこで逆転するか、種類とデザインの選び方、ケーキにまつわる演出、持ち込みと節約のコツまで整理しました。打ち合わせの前に一度読んでおくと、当日の話が早く進みます。
ウェディングケーキの相場は「1人あたりいくら」で考える
ウェディングケーキの費用は、総額よりもゲスト1人あたりの単価で押さえるほうが自分の式に当てはめやすくなります。
- 標準的なデザイン:1人あたり1,000円〜1,500円
- 装飾にこだわった場合:1人あたり1,500円〜2,000円程度まで上がることも
披露宴の招待人数は平均52.0人というデータがあります(リクルートブライダル総研「ゼクシィ結婚トレンド調査2024」)。この人数で計算すると、おおよそ5万円〜8万円が目安になります。招待人数がすでに固まっているなら、その数字を単価に掛けるのがいちばん早い見積もり方です。
POINT:ウェディングケーキの平均額として「生ケーキ7万2,005円」という数字がよく引用されていますが、これは2017年の調査による数字です。10年近く前のもので、その後は物価も会場の料金体系も動いています。総額の平均をそのまま持ってくるより、1人あたりの単価に自分の招待人数を掛けるほうが実態に近づきます。
生ケーキとイミテーションケーキの違い
ウェディングケーキは大きく2種類に分かれます。まず、それぞれが何なのかを押さえておきます。
生ケーキ(フレッシュケーキ)
スポンジやパイ生地を土台に、生クリームやフルーツで仕上げた本物のケーキです。入刀したあとはそのまま切り分けてゲストに配れるため、「みんなで分け合う」という意味をそのまま実現できるのが最大の強みです。近年は生ケーキを選ぶ人が再び増えています。

一方で、生クリームは形を保ちにくいため、高さのある造形や凝った装飾には向きません。費用も人数に比例して増えていきます。
イミテーションケーキ(セレモニーケーキ)
発泡スチロールなどを土台にした、食べられない装飾用のケーキです。入刀する部分にだけ本物のスポンジが仕込まれています。形の自由度が高く、生ケーキでは難しい高さや造形が実現できるのが持ち味です。
装飾の自由度でも差が出ます。生ケーキは口に入るものなので、観賞用の生花をそのまま飾ることは衛生面から避けられます(花に付いた菌や、栽培時の薬剤が残る可能性があるためです)。生ケーキに花をあしらうなら、食用として育てられたエディブルフラワーを使うのが前提になります。その点イミテーションなら食べないので、生花もケーキトッパーも自由に載せられます。

費用は段数やデザインによって2万円〜5万円ほどと幅がありますが、共通しているのはゲストが何人いても金額が変わらない定額だという点です。入刀用の小ぶりなものなら1万円台から、逆に3段の大がかりなものになると8万円以上になることもあります。
ただし入刀した一部分しか食べられないので、ゲストに配るケーキやデザートは別に用意することになります。
費用の損得は「招待人数」で入れ替わる
ここがいちばん誤解されやすいところです。「イミテーションのほうが安い」と言われますが、それが成り立つのは人数が多い場合だけです。生ケーキは人数に比例して増え、イミテーションは定額なので、どこかで必ず逆転します。
1人あたり1,200円で計算すると、イミテーションが2万円なら約17人、5万円なら約42人のところで両者が並びます。つまり分かれ目はイミテーションの価格しだいで大きく動くということです。20人前後の少人数婚なら、生ケーキのほうが安く収まることも珍しくありません。
覚えておきたいのは具体的な人数ではなく、「人数が少ないほど生ケーキが有利、多いほどイミテーションが有利」という向きです。見積もりが出たら、自分の招待人数で両方を計算して比べてください。
さらに見落としやすいのが、イミテーションを選んだ場合のゲストに配るぶんの費用です。コース料理のデザートで代用すれば追加費用はかかりませんが、デザートビュッフェを付けると1人あたり1,000円〜2,000円が上乗せされます。50人規模なら5万円〜10万円の追加になるため、この段階で生ケーキより高くついてしまいます。
POINT:比べるときは「ケーキ単体の値段」ではなく、ゲストに何を出すかまで含めた合計で並べてください。見積書ではケーキとデザートが別項目になっていることが多く、片方だけを見ると判断を誤ります。
種類とデザインで選ぶ
生ケーキかイミテーションかを決めたら、次は形です。定番から順に挙げます。
- デコレーションケーキ:生クリームにフルーツや食用花をあしらった王道。会場や季節を選ばず収まります
- ネイキッドケーキ:側面にクリームを塗らず、スポンジとフルーツの断面を見せる仕上げ。ナチュラルな会場やガーデンウェディングと相性がよいデザインです
- クロカンブッシュ:小さなシュークリームを飴で固めながら円錐状に積み上げたフランスの伝統菓子。名前は「口の中でカリッとする」という意味です。シューはフランス語でキャベツを指し、ヨーロッパに伝わる「キャベツ畑から赤ちゃんが生まれる」という言い伝えから子宝の象徴とされてきました。切り分けの手間がかからないのも利点です
- カップケーキタワー:ひとつずつ焼いたカップケーキを段に並べる形式。切り分ける作業が要らず、少人数の式でも様になります
- シュガーケーキ:砂糖と卵白を練ったシュガーペーストで全体を覆う、イギリスの伝統的なウェディングケーキ。土台はブランデーを利かせたドライフルーツケーキで、細工の自由度が高く日持ちもします

シュガーケーキには面白い慣習があります。イギリスでは3段重ねが定番で、下段は披露宴の列席者へ、中段は当日来られなかった遠方の人へ、上段は結婚1周年か赤ちゃんが生まれるまで保管して食べるとされています。日持ちする作りだからこそ成り立つ習わしです。
もうひとつ、発注のときに確認しておきたいのが何人分で見積もられているかです。多くの会場は「1人あたりの単価×ゲスト人数」で計算しますが、入刀で崩れる部分や新郎新婦のぶんを見込んで少し多めに取るところもあります。当日になって行き渡らなかった、ということがないよう、見積書の数量がゲスト人数と同じなのか余裕をみた数なのかを聞いておくと安心です。
形が決まったら段数と土台の形を考えます。段数が増えるほど、また四角より丸、丸よりハート型と造形が複雑になるほど費用は上がります。1段でも装飾次第で十分に華やかになるので、段数を増やすかどうかは会場の広さと写真の見え方で判断すると納得しやすいはずです。
ケーキにまつわる演出
ケーキは置いておくだけのものではなく、いくつかの演出とセットになっています。それぞれ意味があるので、知っておくと当日の実感が変わります。
ケーキ入刀
二人で初めて共同作業をする場面です。由来には諸説あり、貧しい二人がひとつのパンを分け合ったという言い伝えから「これから先も食べるものに困らないように」という願いを込めたとする説がよく知られています。新婦ひとりでは切れないほど固いケーキに、新郎が手を添えたのが始まりという説もあります。

ファーストバイト
入刀したケーキを二人で食べさせ合う演出です。込められた意味がそれぞれ違います。
- 新郎から新婦へ:「一生食べるものに困らせない」
- 新婦から新郎へ:「一生おいしい料理をつくります」
大きなスプーンを使って盛り上げる演出が定番になっていますが、写真に残ることを考えると、二人が同時に食べさせ合う形のほうがきれいにまとまります。司会者に「せーの」と合図を入れてもらうと、タイミングが揃います。
サンクスバイト
育ててくれた両親へケーキを食べさせる演出です。ファーストバイトのあとに続けて行うと流れが自然になります。両親贈呈品とあわせて考えると、感謝を伝える場面をひとつにまとめられます。
デザートビュッフェ
ゲストが好きなデザートを取りに行くスタイルです。所要時間は20分前後が一般的で、席を立って歩き回るぶん、ゲスト同士の交流が生まれやすくなります。費用は1人あたり1,000円〜2,000円ほど。イミテーションケーキと組み合わせる場合の受け皿にもなります。
なおケーキ入刀の代わりに、日本酒の鏡開きやバウムクーヘン、大きなおにぎりなどを使う式も増えています。会場が対応できるかどうかで実現性が変わるので、やりたい場合は早めに相談してください。お金がかかりにくい演出アイデアもあわせて検討すると、全体の予算が組みやすくなります。
持ち込みはできる?持ち込み料の考え方
気に入ったパティスリーのケーキを使いたい場合、まず確認したいのが持ち込みの可否です。ウェディングケーキは生ものなので、そもそも持ち込みを認めていない会場が少なくありません。衛生管理の責任を会場が負えないことが理由です。
認められた場合も、費用は持ち込み料だけで終わらないことがあります。
- 持ち込み料:会場に支払う基本の費用
- 保管料:当日まで冷蔵で預かってもらう費用
- カット料:切り分けてゲストに配るための費用
この3つを足すと、会場で頼むのと変わらない金額に届いてしまう場合があります。持ち込みで安くしたいなら、見積もりの段階で3項目すべてを確認してから判断してください。考え方は引き出物を持ち込みにするか式場で注文するかとまったく同じです。
費用を抑えるコツ
見栄えを落とさずに金額を下げる方法はいくつもあります。
- 形をシンプルにする:もっともコスパがよいのはスクエア(四角)です。丸型やハート型は生地を切り出すときのロスが多いぶん、基本料金が高めに設定されています
- 装飾は面ではなく点で足す:全面を細工で埋めるより、ケーキトッパーを1つ載せるほうが安く、写真映えもします
- 季節のフルーツを使う:旬のものは仕入れ値が下がるうえ、色数が少なくてもまとまります
- いちごにこだわらない:いちごは通年で高価な部類です。ここを桃やパイナップルなどに替えるだけでも金額は動くので、色味の希望をパティシエに伝えて相談してみてください
- コースのデザートを活用する:デザートビュッフェを付けなくても、コースに含まれるデザートで十分成立します
逆に、ここを削ると後悔しやすいのがケーキそのものを写す照明と、入刀の立ち位置です。費用のかからない部分なので、打ち合わせで必ず確認しておいてください。
決めるタイミングと打ち合わせの進め方
ケーキを考えはじめるのは挙式の2〜3ヶ月前、確定させるのは1ヶ月前〜3週間前までが目安です。人数が固まっていないと見積もりが出せないので、招待客の返信がある程度そろってから本格的に決めていきます。全体の流れは式場決定後にやることリストにまとめています。
進め方としては、コース料理の内容を決めるタイミングに合わせるのが効率的です。デザートをどうするかとケーキをどうするかは連動するので、別々に決めると後から辻褄が合わなくなります。
打ち合わせを短く済ませるコツは、好みのケーキの画像を3〜5枚用意しておくことです。言葉で「かわいい感じ」と伝えても伝わりにくく、時間だけが過ぎていきます。InstagramやPinterestで気になったものを保存しておき、その場で見せるのがいちばん早い方法です。
あわせて、当日の段取りで抜けが出やすい部分は当日までに確認しておきたいチェックリストで確認できます。
よくある質問
Q. アレルギーのあるゲストがいる場合は?
招待状の返信でアレルギーを申告してもらい、その内容を会場へ伝えます。ケーキは卵・乳・小麦とアレルギー特定原材料が集中する食べ物なので、料理以上に確認が必要です。該当するゲストには別のデザートを用意してもらえることがほとんどなので、人数と内容を早めに共有してください。
Q. 生ケーキは食べきれる量なの?
コース料理のあとに出るため、ひとりぶんは小さめに切り分けられます。人数ぶんを見込んで発注するので、大量に余ることは基本的にありません。逆に「もっと食べたかった」と感じる量なので、量を重視するならデザートビュッフェを組み合わせる形になります。
Q. ウェディングケーキなしでもいい?
問題ありません。会食中心の少人数婚では省くケースもあります。ただしケーキ入刀は写真がもっとも集まる場面のひとつなので、なくすなら代わりになる山場を用意しておくと進行が間延びしません。鏡開きやキャンドルサービスなど、会場が対応できる演出を相談してみてください。
Q. 結局、生ケーキとイミテーションどちらがいい?
判断の軸は2つです。ゲストに配ることを重視するなら生ケーキ、造形やスケール感を重視するならイミテーション。そのうえで費用は招待人数によって逆転します。分かれ目はイミテーションの価格によりますが、おおよそ20人〜40人のあたりです。見積もりの段階で、自分の人数を当てはめた金額を両方出してもらいましょう。
Q. 入刀のとき、ナイフが入らないことはある?
イミテーションケーキでは起こりえます。土台が軽い素材のため、力の入れ方によっては刃がうまく進みません。入刀用のスポンジがどこに仕込まれているかを事前に確認し、当日はスタッフの合図に従って入れると失敗しません。
まとめ
- 相場は総額ではなく「1人あたり1,000円〜1,500円 × 招待人数」で考える
- よく引用される「平均7万2,005円」は2017年の調査。そのまま当てにしない
- 生ケーキとイミテーションの損得は必ずどこかで逆転する。分かれ目はイミテーションの価格しだいで20人〜40人あたり
- イミテーションを選ぶなら、ゲストに配るデザートの費用まで含めて比べる
- 持ち込みは持ち込み料・保管料・カット料の3つを確認してから判断する
- 打ち合わせは挙式2〜4ヶ月前。画像を3〜5枚持っていくと早く決まる
ケーキは「どれくらいこだわるか」で金額が大きく動くぶん、削りどころと残しどころがはっきりしている項目でもあります。人数で計算して、配るところまで含めて比べる。この2つを押さえておけば、打ち合わせの場で迷わずに決められます。